今回紹介するのはナムコから発売されているプレイステーション2用のテニスゲーム、『スマッシュコート・プロトーナメント』(以下はスマッシュコートと略)だ。結論から言ってしまうと、このゲーム、かなり面白いと思う。個人的にはスポーツゲームに欠かせない要素は爽快感と(そのスポーツの)ファン心を刺激するこだわりだと思うが、このゲームはその2つを兼ね備えていると思うからだ。まず、登場するテニス選手達や大会名が実名というだけでもテニス愛好家へのツカミはOKなのだが、それがこのゲームでは実にリアルに再現されている。各大会毎のロゴマークも表示されるし、スタジアムの様子なども実際の雰囲気が良く出ている。さらにパリトーナメントでは審判の声もフランス語になるという凝りようだ。また、BGMやスコアの表示、ポイント間に挿入されるリプレイシーンやワイプ(場面転換)の仕方も格好よく、とてもセンスが良いと思う。単にリアルに再現したというだけでなく、『テニスをカッコよく魅せよう』という気持ちが感じられる。

さて、肝心のゲームシステムについてだが、テニスゲームは大きく分けると、ボタンを押すタイミングを重視するものと、戦略重視のものに大別されるが、最近のテニスゲームのトレンドは後者であり、スマッシュコートもこちらに分類されると思う。
タイミング重視というのはどういうことかというと、適切なタイミングでボタンを押さないと、空振り、ネットやアウトなどのミスをしてしまうタイプのものだ。実際のテニスもインパクトのタイミングが違えばこのようになるから、ある意味リアルとも言えるのだが、これだと慣れるまでに時間がかかってなかなかテニスの醍醐味を味わうところまで到達できない。スマッシュコートの場合には少しくらいボタンを押すタイミングが狂ってもとりあえずボールを返してくれるし、チャンスボールがくれば自動的にハードヒットに切り替えてくれる。だから誰でもすぐにラリーを続けることができるし、テニスの戦略的な醍醐味を味わうことができる。もちろん、適切なタイミングでボタンを押せば『NICE』の表示が出て通常よりもボールのスピードがアップするとか、トップスピンロブやドロップショットなどは多少操作が複雑になっていて、コントローラの操作がうまい人はそれなりに得するような工夫もされている。



登場する選手たちの動きは、実際の選手のフォームや仕草を参考にしており、ちゃんとそれっぽい動きになっている。ウェアも昨年のモデルではあるが、各選手が着用していたものと同じデザインだし、ウェアを変更することもできる。音声も凝っていて、例えばスマッシュやウィナーを決めるときには『ウンッ』なんて声が聞こえたりする。惜しいのは登場する選手の数が男女各4人ずつだということ。これが男女各8人ずつだったらもっと良かった。


今回は登場していないが、もしドキッチがいたら、『キシュッ』、ディメンティエバなら『フォオッ』、ヴィーナスだったら『アンッ』だったりするのだろうか、なんて夢が膨らんでしまった。それからマッチポイントのときにコントローラが心臓の鼓動のように、ゆっくりと振動する。実際は緊張してないんだけど、なんだか緊張しているかのように錯覚させられてしまう。なかなか良い演出だと思った。ひとつ気になったのはサービスチェンジなどの合間に挿入されるビジュアルシーンで、セレスがラケット面を手で叩くことがある。確かに実際のセレスもこのような仕草をすることがあるが、これは相手選手が良いプレイをしたときに相手を賞賛するためのもので、自分がサービスキープをした直後にするようなものではない。それから、選手たちにはプレイスタイルが設定されていて、特徴付けがなされているのだが、クルニコワがネットプレイヤーに分類されているのも気になった。実際のクルニコワもネットプレイをしない訳でもないが、基本的にはストローカー(もしくはオールラウンダー)に分類されると思う。このゲームに登場する女子選手の中で、はっきりとネットプレイヤーと呼べるような選手がいないので、女子のネットプレイヤーを用意しておくためにこのようなことになったのかも知れないが・・・。しかし、ネットプレイヤーに設定されているおかげでクルニコワでプレイする場合にはダイビングボレーができる。クルニコワのダイビングボレーなんて、実際には見たことないけど、カッコいいからOKと言うことにしときます。(ちなみにダイビングボレーはラフターやサンプラスでも可)

 






このサイトはゲームサイトではなくて、テニスサイトであるから、スマッシュコートが実際のテニスとどこが違うのか、またどこまで本物のテニスに近づけているのか、そのあたりも見ていこう。
まず、サーブ、ストローク、ボレー、スマッシュ、トップスピン、スライスなど、基本的に通常のテニスで使われるショットはすべて打つことができるし、ゲームバランスも良くできているので、戦略面では実際のテニスにも当てはまる部分がたくさんあると思った。たとえば、シングルスでは一人でコート1面を守るので、ある程度相手のコースを予測していないとボールに追いつくことができない。ストレートよりも外に逃げるボールのほうが追いつきにくいから必然的にクロスラリーが基本となる。しかし、あからさまにオープンコートを作ればストレートに打たれてしまうし、わざとオープンコートを作っておいて相手にそこを狙わせて、相手が打つ直前にオープンコートにダッシュするなんてのも有効だ。もちろん、移動するタイミングが早すぎると逆をつかれてしまう。このあたりのオープンコートに対する意識というのは実際のテニスと共通する部分だと思う。
もうひとつ例を挙げると、ワイドに振られたときにクロスにボールを打ち返すのは難しいが、これはこのゲームにも当てはまる。テニスゲームに馴れた人ならわかると思うが、プレイヤーの移動と打ち返す打球方向の指定はどちらも同じスティック(または十字キー)を使うからだ。例えば右に振られたときにはスティックを右に入れてダッシュしたままの状態でボールを打つから(左に入れている余裕がない)打球も右方向、つまりストレートにしか打てない。だから相手をワイドに追い込んだときにはストレート寄りにネットダッシュするなんてのも有効だが、これは実際のテニスでもセオリーの一つだ。特にスマッシュコートの場合には、追い詰められた状態ではパスを打てる角度が狭まるなどの調整もされていて、よりリアルに再現されている。

少し残念なのはボールの高低についての味付けが弱いような気がすることだ。もちろん、ロブでボレーヤーの頭上を抜いたりはできるのだが、トップスピンとスライスの使い分けがわかりにくいと思った。これはスマッシュコートに限った話ではないのだが、ビデオゲームでのスライスというのはボールのスピードが遅くなるだけで、あまりスライスのメリットがでていないと思う。というのもコンピュータも、プレイヤーが操作する場合でも、スライスのボールは、ただボタンを押すだけで難なく打ち返すことができてしまうので、トップスピンよりもスピードが遅い分だけ不利になってしまうからだ。例えば、実際のセレスは高い打点でのハードヒットが得意だが、こう言った要素をビデオゲームにも反映して、トップスピンで高く弾ませると(あまり追い込んでいない場合)セレスの得意の打点に入って打ち込まれてしまうが、スライスで低く沈めていけば攻撃されにくいとか、そういったことで、球種の打ち分けやコートサーフェスの違いなども戦略的な要素に加えることができるのではないかと思う。
それから、もうひとつ気になったのはサービスエースがあまり取れないこと。ゲーム性を考慮してこのようにチューニングしたのかも知れないが、特に男子プロの世界ではサービスキープが鉄則となっているだけに、もう少しサービスゲームの優位性があっても良いと思った。
色々と好き勝手なことを書かせていただいたが、これは良くできているからこそ、今後に更に期待したいという意味で書いたのであって、スマッシュコートが面白いゲームであることに変わりはない。また面白いだけでなく、前述したようにテニスの戦略面でも実戦と共通の部分があるので、あまり試合馴れしていない人なら、ダブルス、シングルスともに、ポジショニング(どこに移動するか)やプレースメント(どこに打つか)を理解するのに役立つと思う。特に実際のテニスではシングルスでネットプレイを駆使できるようになるには時間がかかるが、ビデオゲームであれば比較的簡単にネットプレイに挑戦することができる。
さらに言うと、イメージトレーニングにもなるのではないかと思った。ちなみにイメージトレーニングとは本来は自分自身が良いプレイをしたときの姿を想像するもので、実在の選手のプレイを観ることは観察学習と呼ぶのだが、ビデオゲームの場合には自身で操作しているので、イメージトレーニングと呼んでも良いのではないかと思う。

最後に結論としては、なんと言ってもトッププロのキャラクターを使ってボレーやスマッシュを決めたときの爽快感は心地よい。サンプラスとヒンギスなんていう夢のミックスダブルスもできるし、テニスとビデオゲームの両方が好きな人になら間違いなくお勧めの1本だ。
(テキスト by モーニング秀坊)

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スマッシュコート プロトーナメント
価   格 : ¥6,800(税別)
発売元: (株)ナムコ
<<ゲームの仕様>>

対応機種: プレイステーション2
プレイ人数: 1人〜4人
メモリーカード必要ブロック : 75 KB 以上
仕   様 : 4人同時プレイ可能、PS2専用マルチタップ対応
登場選手: ヒンギス、ダベンポート、セレス、クルニコワ、サンプラス、カフェルニコフ、アガシ、ラフター
プレイ可能な大会: 4大大会(全豪、フランス、ウィンブルドン、全米) ※フランス大会はゲーム内オリジナルのものです
プレイモード: アーケード、プロトーナメント、エキシビジョン、チャレンジ
球種: フラット、トップスピン、スライス、ロブ、トップスピンロブ、ドロップショット

 

※このページの画像は(株)ナムコの許諾を得て使用しています